もうひとつ大きな変化として、アロマセラピーに関わる研究論文、エビデンスが出てくるようになってきました。
今までアロマセラピーは、「海外でこう言われています」という海外の翻訳本に頼ることが多く、追っていくと出処が不明ということもありました。
嗅覚研究が一段と進み、アロマセラピーと関わる研究が積み上げられ、それを、どう利用するかといういう段階になってきて、国内や海外の論文を読む力も必要になってきました。

それで、研究データをもとに、講座を作ったり、実際にクライアントに応用したりしています。
エビデンスには嗅覚の心理的、生理学的なものと、動物だったり、人間だったりを対象に、実験としてアロマセラピーを使い、使ってない群と比較してこんな効果がありましたというものがありますが、実際の場面でどう使うかとなると、また現場での経験が必要になってきます。

人と人との関係や使用するときの状況などの環境、体調、性差など様々な要因に影響するところがあるからです。
そのまま研究データを使えれば、すっきりと分かりやすいのですが、そうはいかないことが多いのが臨床現場です。
私は、嗅覚研究と合わせ、精油を目の前の人の幸福な生活にどう使うか? ということを日々考えています。また、講座に来てくれる生徒さんには、そういったことを自分で考えることができる力も持ってもらいたいと思っています。
研究ではこうだったけど、本当にそうなのか。自分で考える力を養うように。たとえばラベンダーは落ち着くという研究もありますが、一方でラベンダーは興奮するというデータもありますよ、とか。この研究はもしかしたら被験者数が少ないことがあるかもしれませんねとか。
生徒さんが自分で考えることができるようになると、現場が違うところで活動するアロマセラピストがそれぞれの視点から分かち合いやディスカッションができます。
そうやって、臨床現場の試行錯誤を共有することが、アロマセラピストが、専門家として、職業人として、社会のなかで自律する一歩になると思っています。